コージーミステリとは、居心地の良い居間で香り高い紅茶に焼き菓子でもお供に、くつろいで読むのに適したミステリといわれています。
・豪邸や上流の人々は必須アイテム。貧困や差別など社会問題はパス。
・多くは女性の素人探偵が隠された人間関係などを探って犯人を探す。
・ヒロインと刑事や弁護士などとのロマンスもからむことが多い。
・殺人は起きますが、暴力・流血・極端に残酷なシーンは避けられる。
といった「お約束」があります。片平なぎさ主演2時間サスペンスドラマのようなミステリ、とご説明したらわかりやすいでしょうか。あっといわせるような凝ったトリックは期待出来ませんが、多くの作品が本格ミステリよりもやさしい英語で書かれているのが嬉しいところです。
レシピが載った、ケーキ屋さんやチョコレート屋さん、コーヒーショップなどを舞台にするグルメ系が大流行ですが、花屋・本屋・ペットショップ・ツアーコンダクター・ウェディングプランナーなどの業界内幕ものも百花繚乱です。犬や猫が探偵をするペットものもあります。本格ミステリよりもたくさん発刊されているかも知れません、選ぶのに苦労します。ということは、やさしくて面白いシリーズを発掘してご紹介する楽しみもあるということですが。
やはり10巻以上続いたシリーズは、手堅くまとまっていてミステリとしても楽しめ主人公のロマンスなどのサイドストーリーも面白く、ハズレと感じることは少ないのですが、だんだん難しくなったりやさしくなったり英語レベルが変化するものもあります。また長く続いたシリーズは、一部の巻が手に入らなくなることもあります。
邦訳の面白さと原作の面白さは連動するとは限りません。翻訳が面白かったからと原作に挑戦してみたら、原作はかなり英語が難しくて手こずったり、また翻訳が原作の面白さを損なっている場合もあります。
このサイトでは、英語原作と翻訳本をセットでご紹介。お気に入りのシリーズや面白かったあの本を今度は英語で挑戦してみたい、という方、洋書に挑戦したいけれど途中で分からなくなるのが心配、そんなときに日本語で続きが読めるように翻訳のある洋書を読みたい、という方のお役に立つことを願っております。
コージーミステリを読むメリット
ほとんどのコージーミステリ作家は女性で、読者対象も女性なので、日常生活の細々としたことが書き込まれます。疑似ホームステイ感覚があって楽しいことはもとより、アメリカ人の日常生活が具体的にイメージできるようになることで、小説全般にわたって理解度がぐんと高まります。
英語で小説を読むとき、日本語で読むほどくっきりとは理解できず、もどかしく思うことがしばしばです。それは単に語彙力が足りないとか、難しい構文が理解できないといった英語力だけの問題ではありません。
小説は、さまざまな共通認識を前提に書かれています。北海道は広々とした景色が広がり、東北の冬は雪に埋もれる、京都の夏は過ごしにくい、九州は暖かく、沖縄の空は南国の青さ、とか。登場人物のセリフによって、東北弁なら木訥・ねばり強く、大阪弁なら金銭にシビアなこと、京都弁ならもの柔らかさの下に本音を隠している、九州弁なら亭主関白を暗示したりします。東大卒の官僚とか、幼稚舎から慶応の2代目社長とか、聖心女子大卒の外交官夫人などの一言からも、一定のイメージが形成されますね。実際には、どの地方にもどの学校にもいろいろな人柄の人がいるのですが、小説の世界にはこうした「お約束」があるのです。
アメリカにも当然、こうしたステレオタイプがあります。地域が違えば生活様式も異なりますし、なにしろ多民族国家です。また同じアメリカ人でも信仰する宗派の違いによって、進化論を認めない人までいますから、かなりの背景知識がないと文章の上辺だけしか読みとれず、くっきり分かった気分になれずもやもやが残ります。
コージーミステリは、こうした背景知識を増やすのに最適です。舞台設定された土地の気候や季節毎の生活が詳しく描かれるのが普通ですし、その土地のステレオタイプとされる人物が必ず登場します。
本格ミステリ小説になると、それほどこと細かに地域の特性や社会生活のルールを説明してくれません。逃げる犯人・追う探偵の行動が中心のストーリーになりますが、犯人の手がかりを追うのも、証拠探しをするのもまさに日常生活の中から見つけるわけですから、それが具体的にイメージできればできるほど探偵に同化できて、自分が探偵になった気分を楽しめます。
文芸作品では、登場人物が優雅であるとか粗野であるとか、言葉で表しません。著者は、その人物の行動を描くことで読者に「優雅」「粗野」だと感じさせる手法をとります。これは英語のニュアンスまで読みとれないと理解することが難しいですね。ところがコージーミステリレベルですと、登場人物のセリフの後に、「お上品ぶったいい方だわね」とか、「いつもの人を見下した態度だわ」「そんな物のいい方、どんな育ちをしてきたかわかるってものだわ」「まったく失礼なことを聞く人だわ」などの感想が頻出です。ですから、読み続けるうちに、自分で言葉のニュアンスを感じ取る力がついてきます。文芸的な小説を読んだときにも、ストーリー展開を追うだけではなく登場人物の感情を読みとって生き生きと感じられるようになります。
本格ミステリを楽しみたい方にも、文芸小説を読みたい方にも、コージーミステリはよい準備運動になります。
一通りの英会話をマスターして、さらにレベルアップしたい人にも役立つと思います。アメリカ人はとても褒め上手で、ちょっと数分の会話の中でも何か褒めます。日本人は褒められても、「いえ、そんな、とんでもない..」なんて返事をすることに慣らされていますから、何と返事をしたらいいのか言葉につまりがちで、スマートに返せません。
むやみに謙遜せず、日本人から見ればおおらかに自慢するアメリカ人ですが、「自慢屋」と嫌われる人もいるのですね。どんな褒め方をすればいいのか?どんな自慢が許されて、どんな自慢が嫌われるのか?コージーミステリでは、そんなことがたっぷり学べます。
欠点といえば、男性が読んで楽しめるものが探しにくいことでしょう。
1980年代頃までは、比較的やさしい英語で書かれた、酔っぱらいのダメ人間タイプの探偵を主人公とする男性向けユーモアミステリなどもあったのですが、なぜか1990年代には姿を消しています。男性は気楽に読み流せる本を求めないのでしょうか?